イワサキ経営スタッフリレーブログ

2015.10.20

ギリシャのユーロ離脱はありえるのか ~安部 和人~

 欧州連合(EU)が求める財政緊縮策への賛否を問うギリシャの国民投票が7月5日に投開票され、反対票が賛成票を上回り、ギリシャのチプラス首相はこの結果を理由に財政緊縮策を拒否した出来事はまだ記憶に新しいかと思います。その際のニュースでは、毎日のようにギリシャがユーロから離脱するのではないかと報じられていました。しかし、ギリシャがユーロから離脱する事は本当に可能なのでしょうか?実は法律には、ユーロからの離脱に関する手続きはまったく定められていません。元々、ユーロから離脱するという事を想定して共通通貨ユーロを導入していませんでした。

そのため、正式なステップを踏んでユーロを離脱するためには、既に離脱の規定があるEU事態から離脱する必要があります。もしEUからギリシャが離脱すると、ギリシャはEUから何の援助も受けられなくなってしまいます。さらにEUから離脱するためにはEU加盟国27ヵ国の承認が必要であり、プロセスが完了してEUから正式に離脱できるまでには2年ほどの時間がかかると言われています。その2年の間に、ギリシャ国民は大幅な評価損を被らないようにするために通貨が変わる前にユーロを国内の銀行から引き出して外国の銀行の口座に移し替えるという資本逃避が起こる事は確実です。
また、ギリシャがユーロから離脱をして昔の通貨であるドラクマに戻した場合、為替相場が大幅に引き下がり、競争力が上がり輸出を増やすことができて経済が回復するという説があります。しかし、ギリシャ国民は現在、財産も借金もユーロで持っているため、ユーロより弱い通貨であるドラクマにした場合、実質的な財産価値はどんどん目減りし、逆に負債はどんどん増えてしまいます。例えば、ドラクマがユーロに対して50%切り下がったとすると、実質の財産は半分になり、ユーロ建ての負債は2倍になってしまうのです。そのため、輸出が伸びようが、税金を増やそうが、借金の返済は不可能でありデフォルトは必須であります。また、そうなれば債権国であるドイツなどの国も大損害を被ってしまいます。
ギリシャがユーロから離脱するためには、このような厄介な問題がたくさんあります。そのため、正式なプロセスを経てのユーロ離脱は、実際上は困難であることがわかります。

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