イワサキ経営スタッフリレーブログ

2012.11.29

JAL再上場へ ~井野 秀美~

 2010年1月に会社更生法適用を申請し、経営再建を行ってきた日本航空(JAL)が、2012年9月19日、東京証券取引所に再上場したというニュースは皆さんもご存じのことでしょう。経営破綻してから2年8カ月という短期間でのV字回復を遂げた努力は評価されます。しかし、さまざまな問題が残っているというのも事実です。

JALは破綻してから、金融機関による債権放棄(5,215億円)と起業再生支援機構からの公的資金の注入(3,500億円)を受け、さらに京セラの創業者、稲盛和夫氏がJAL会長に就任し、効率の悪い大型機材を売却し、中型機を主体とする機材編成や大幅なリストラなどの改革を行い、奇跡のV字回復を遂げました。
さて、今後のJALにとって課題とは何でしょうか。今回の上場で、国には6,500億円が納付され、3,000億円の収益を手にする見通しです。会社は立ち直ったし、国ももうかったからよかったと思われるかもしれませんが、そう簡単な話ではありません。JALの経営が盤石になったかどうか見極めるのはまだ早いですし、手厚い支援の結果、公平な競争が妨げられているという批判も起きています。JALは銀行に債権放棄してもらっているので、手持ちの現金も考えると、事実上無借金経営です。また、破綻や過程での赤字が膨れ上がり、繰越欠損金の相殺があるので、一定期間、法人税を払わなくて済みます。こうしたことで、ライバルの全日空(ANA)は、「利益をためて大型投資が出来るしこれだけ競争条件が違うのでは、公正な競争はできない」と反発しています。
今回のJAL救済は異例の処置だという問題意識が、政府の間ではあまりにも希薄でした。かつて、銀行に膨大な公的資金を投じましたが、この時は皆恩恵を受けたので問題は起きませんでしたが、航空業界は大手2社だけですから、影響は容易に想像がついたはずです。EU・欧州連合には、公的支援を受けた企業の活動に対して、自助努力してきた企業と不公平にならないよう、ガイドラインがあります。政府は今後こうしたガイドライン作りを検討する構えです。航空に限らず同じような事はありうるので、今回の問題をきちんと総括して、制度の改革に結び付けて欲しいものです。

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