イワサキ経営スタッフリレーブログ

2016.05.18

空き家税制 ~勝又 健太郎~

 平成28年4月1日から空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例が創設されています。ひとり暮らしの方が亡くなって住まなくなった空き家を売却した場合、一定の要件を満たせば譲渡益から3,000万円を控除することができます。税額で考えると最大で約600万円が減免となります。

上記の制度創設の背景には、空き家問題の深刻化があります。相続の後に空き家になってしまい、適切な管理が行われないまま建物が老朽化し火災や倒壊が心配されたり、衛生上、景観上周辺の生活環境に悪影響を及ぼしてしまうケースが増え、全国的に問題となっているようです。
住まなくなった実家であっても思い出は残っているし、兄弟や親せきの手前、簡単には処分できないのかもしれません。また、老朽化して危険だからといって、建物を取り壊せば解体費用がかかりますし、更地にしてしまうと土地の固定資産税が最大6倍になってしまうケースも予想され、経済的な負担が大きくなることも空き家の増加に拍車をかけているようです。
国は昨年5月に「空き家対策法」を施行し対策を強化していますが、今回の空き家税制は所有者が売りやすい環境を整えることで同対策法を補完する役割を担っているように思います。
私は日頃相続税の申告業務を通じて相続を間近で見ていますが、確かに相続後に空き家になってしまう例は増えているように思います。住まなくなった実家の売却を相談されることも増えました。ひと昔前、相続の現場では、土地は相続人の間で「奪い合い」がなされる財産でした。しかし最近では、保有していることによる管理の手間や固定資産税の負担を嫌って、一部の土地は負の遺産として「押し付け合い」になるケースも見られます。以前には考えられないことですが、人口問題や少子高齢化の影響で時代が変わりつつあるのかもしれません。
相続は「相(すがた)を続けていく」ことだといわれます。時代が変わり価値観が多様化するなか、先代のときと同じ形で物(財産)を子孫に引き継いでいくのは容易ではありません。しかし先代の遺志を尊重し、それを次の世代に伝えることはできると思います。物のすがたは変わっても、心のすがたは変わらずに引き継がれていく、そんな相続が理想なのかもしれません。

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